物語だんだん

だんだん物語となるべし段の談

ミステリ

離れに住む弟子

ユカリがいなくなって1週間が経とうとしていた。何の手掛かりもなかった。洋平は憔悴していった。 カヤさん 離れ 美術学校 松田家 美術学校 カヤさん 「洋平ぼっちゃま、田村は遠出をしているのですか」 カヤさんが心配そうな顔で近付いてきた。 「食卓に昨…

行方不明の妹

洋平はお手伝いのカヤさんからユカリの不在を知らされた。ユカリを心配するとともに家のことに無関心だった自分を悔いた。 安岡教授 駐在所 美術学校 田村 松田画伯の弟子 安岡教授 ユカリが帰宅しなかった翌朝、洋平は美術学校へ赴いた。 安岡教授への面会…

校門で待つ男

安岡教授の絵のモデルとなったユカリは、その日も美術学校の教授室でモデルの仕事をした。 ユカリ 松田画伯の息女 田村 松田画伯の弟子 松田家 ユカリ 松田画伯の息女 夕刻になり私は安岡教授の部屋を出ました。 作品の完成が近いせいか安岡教授はとても機嫌…

美術学校のモデル

扉がノックされ、一人の若者が入ってきた。松田画伯の息子の洋平だった。 洋平 松田画伯の息子 山本先生 美術学校の教員 美術学校の生徒たち 校長室 洋平 松田画伯の息子 「山本先生、ご無沙汰しております」 「松田さん、久しぶりね」 「先生、昨日、妹は帰…

城を出たサトウ

サトウは馬を走らせた。夜の帳が下りて闇は深まっていた。細い三日月の光だけが頼りの険しい山道をペガサスとともに駆け降りた。足元が暗く、何度も藪に突っ込み、大木にぶつかりそうになった。興奮するペガサスに声を掛けて落ち着かせた。「ペガサス、おま…

癒しのハンス

鈍痛のなかサトウは目を覚ました。頭が重く胃がむかむかした。身体を動かしてみると左手と右足が鎖で繋がれていた。サトウは頭中の霧をかき分けるようにして記憶を辿った。興奮したトーラに注射を打たれたのだ。睡眠剤かあるいは麻薬の類かもしれない。一晩…

嘆きのハンス

「鍵は開かなかった」ハンスはベッドにうつぶせになり泣いていました。「鍵も縄もこんなに上手なのに、トーラは僕のこと、マイスターじゃないって言うんだ」ハンスが何故マイスターになれないのか、私は理解しました。私がいる間、この世界に存在している間…

黄金の鍵

ハンスは燭台を手に暗い廊下を進んだ。奥の壁に掛けられた絵の前で立ち止るとうつむいた。これまでこの絵をちゃんと見たことがなかった。ハンスは意を決して顔を上げた。「ああっ」描かれている女性はハンスの祖母だった。祖母はハンスが小さい頃に亡くなっ…

秘密の部屋

「隠し部屋だ」 サトウは手にしていたランタンを部屋の中にかざした。暗闇に診察台らしきベッドがいくつか浮かび上がった。ほかに何もない空間にポツンポツンと置かれた診察台が不気味だった。「秘薬は、きっとここにあるんだわ。この秘密の部屋のどこかに隠…

ハンスの帰城

トーラは執事に馬を手配させた。だが途中の村にはすぐに城へ向かえる馬はいなかった。「サトウ、まだ帰れそうにない。馬で行くのが一番早いのだけど、今、使えるのは私の愛馬ノアだけ。二人乗りじゃこの山を下るのは難しい」 診療所 トーラの弟 ハンスの仕事…

退院の日

サキの病室の窓から百日紅が見えた。赤い花。この一年いろいろなことがあった。三軒坂校舎の火災。逃げ遅れて救助されたこと。菊坂の新しい校舎。そして骨折、入院。幸い2週間ほどで退院できる見込みで9月にはまた美術学校へ通えそうだ。 病室 退院の前日 退…

美術学校の盆休み

盆が近くなり、サキは本所の実家へ帰省することにした。実家から学校までさほど遠くはなかったが、ほとんどの生徒は寄宿舎に入るのでサキも寄宿舎へ入舎していた。 盆休み 帰省 居残り 寄宿舎廊下 実家 寄宿舎 天祥堂医院 寄宿舎廊下 降霊会 盆休み 「今年は…

地下室の鍵

トーラはサトウを連れて実家へ戻ったが、父から結婚を反対された。トーラは代々続く診療所の跡取りだった。サトウと結婚して家を出ることは許してもらえなかった。 ハンスとサトウ トーラとハンス サトウとトーラ ハンスとサトウ サトウはハンスを見直した。…